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「年寄りだから借りられない」はおかしい ~ 中川寛子:東京情報堂代表 ~ [人生・生活]

高齢者の住宅問題なんて、自分には関係ないと考えている人は少なくないだろう。だが、この問題が解消されなければ困るのは現在の20~40代である。
住宅・土地統計調査を見ると、住宅を取得している人は、1970年代には25~29歳で3割弱、30代で半数以上、40代では7割いたが、2013年になると25~29歳で1割強、30代で4割弱、40代で6割弱に減っている。
この背景には、結婚年齢の上昇や、それに伴う第1子の出産年齢の上昇などで住宅を取得する年齢が上がっていることに加え、住宅価格の高騰や年収の伸び悩みなどさまざまな要因が考えられる。いずれにしても住宅を買う気にならない人、買える状態にない人が増えているのである。

「高齢者は部屋を借りにくい」という問題は昔からあったが、高齢者の割合は低く、独居老人は少なかったため、あまり問題にはならなかった。しかし近年、高齢化が進み、独居老人も急増している。
国交省が2015年12月に行った家主約27万人に対する調査によると、家賃の支払いや居室内での死亡事故などへの懸念から、7割の家主は高齢者の入居に拒否感があると回答している。

そんな中、高齢者の賃貸居住に関し、新しい動きが少しずつ出始めている。一つは、高齢者自らが自分にとって住みやすい住宅を造るという動き。そしてもう一つは、高齢者を対象に賃貸物件を仲介しようという不動産会社の登場である。

①高齢者自らが自分にとって住みやすい住宅を造る

高齢者が入居するだけでなく、地域の人たちも利用できる共用スペースがあり、多世代が交流できるシェアハウスタイプの住宅で、2014年3月に世田谷区に誕生した「笑惠館(しょうけいかん)」が発端。家族だけで孤立して老後を過ごすのではなく、入居者や施設利用者とのつながりをベースに、互いに支え合う暮らしをイメージしている。
その後、2015年5月には杉並区に「荻窪家族レジデンス」、2016年11月には千葉県山武市に「むすびの家」と、毎年のように造られている。いずれにも共通するのは、従来の、管理者の指示に高齢者が従う施設ではなく、高齢者が主体となって暮らす、一般的な住宅であることである。

②高齢者を対象に賃貸物件を仲介する不動産会社の登場

2015年5月にオープンしたR65不動産。当時は、立ち上げたのが26歳の単身男性だったことが話題となった。この男性、山本遼氏は荻窪家族レジデンス、むすびの家のいずれの仲介にも関わっている。
山本氏は、「高齢というだけで自分らしい生き方ができない、好きな場所に住めない。この状態をそのままにしておいたら、自分が高齢になったときにもそんな思いをするかもしれない。だったら、今から高齢者に部屋を貸すのが当たり前の社会にしていきたいと思いました」。そして、不動産会社を立ち上げた。
山本氏がそのような思いになるひとつに、母親が勤務していた福祉施設でインターンをした経験から、行動が制約される施設での暮らしには疑問を抱いていた。だから、施設ではなく、好きに暮らせる賃貸、なのである。

高齢者の賃貸の問題は、物件不足を想像するかもしれないが、その点はさほど問題ではなく、高齢者の多くが情報弱者であること、物件の場所が非常に限定されることだという。実際、探している人から連絡が来ることはほぼなく、9割は相談を受けた自治体や仕業の人々からの問い合わせである。
また、高齢者は通院している病院やそれまでの人間関係を大事にするため、若い人よりも住む場所が限定される。子どもの近くに住みたい場合も同様で最寄り駅どころか、何丁目何番地まで決め込んで部屋探しになることもあり、結果、3カ月、半年かかるケースも少なくない。

そこで、山本氏は今後、物件を多く抱える管理会社との連携を深めることや、自ら物件を管理する立場になることも考えている。そのノウハウや情報を、広く公開・共有できれば高齢者の居住問題の解決につながるのではないか。これに向けてまずは、入居する高齢者に異変があった際はそれを素早く感知し、対応できる仕組みを構築しようと実証実験を重ねているという。これには、人の目による見守りがいいと判断した。
もう一つ考えているのが、法的、経済的な環境整備である。たとえば、入居者が死亡した場合には賃貸借契約の終了、残置物の処理などが問題になる。大家が入居者死亡をもって契約を終了させ、退去してもらいたいと思っても、一般的な賃貸借では契約は相続人に引き継がれてしまう。こうした大家の不安を解消できれば、貸してもよいと考える人も増えるのではないか。

「現在も高齢者自らが造った住宅の仲介を頼まれるなど、さまざまな人と連携していますが、これからは仕業を含めた幅広い職種の人との協業の必要性を感じます。現在も、これからも長く試行錯誤が続くでしょうが、先人がいないぶん、やりがいがあるので、地道に粘り強く続けていきたい」…山本氏

これまで30年間解決できなかったことが、簡単に解決できるはずもない。しかし、どんなに時間がかかろうが、誰もが自分がしたい暮らしができる社会になることが望ましい。気の長い話だが、誰かが取り組まなければ変わらない。長い目で期待したい。

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