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失われた20年の本当の原因は「頑張りすぎた」から ~JP-PRESS 5/18~ [人生・生活]

振返ると、バブル崩壊以後、「失われた20年」と言われるほど、経済が低迷している。ヨーロッパやアメリカは経済成長を続けていたのに、日本だけが低迷している。理由はいろいろあるが、非常に大きな原因の一つに「これ以上無理というほど頑張っている」というのがある。

バブル崩壊以後、どこの企業も長期間残業が当たり前になった。かつて残業が長いサラリーマンと言えば官僚や銀行員が知られていたが、バブル以降は全産業にそれが広がった。みな、余裕を失ってしまった。
余裕を失うとどうなるか。新しいことを試す余裕、改善する余裕を失ってしまうのだ。どうすべきか分かっていても、それさえ実践できないほど、思考力の低下と行動力の低下が起きてしまう。

■いつも満室の手術室
『いつも「時間がない」あなたに』という本に、面白い事例が紹介されている。
これは、仕事、生活、人生、遊びにおいても、すべてにわたり示唆に富んだ内容である。ぜひ、お薦めしたい1冊である。

―――複数ある手術室はいつも満杯。深夜に及ぶ手術が続き、医者もスタッフも疲れ切っていた。救急患者が来ても手術室がいっぱいですぐに対応できず、手術室の増設が課題になっていた。

そこで経営コンサルタントが病院の経営を分析した。その結果、非常に意外な改革案を提示した。手術室を必ず1つ、使用しないで空けておけというものだ。現場のスタッフは大反対した。「今でも手術室は足りないのに!」と。

ところが、手術室を1つ空けるようにすると、夜中の手術がなくなり、無理のない時刻に予定通りに手術を終えるようになった。救急患者は速やかに手術できるようになった。

なぜか? 手術室を1つ、救急患者専用にしたからだ。

それまでのやり方では、すべての手術室に手術の予定を入れていた。そのために重体の救急患者が運び込まれると、予定していた手術用の道具まで全て片付け、新たに道具をそろえ直し、キャンセルになった患者の予定の組み直しなど、事務作業も膨大になった。無駄を省こうとして大量の無駄が生まれていたのだ。

しかし、救急用に手術室を空けるようにしたことで、予定された手術は予定通りに、救急患者は空いていた手術室にスムーズに入れた。「いつも1つ空けておく」という一見「無駄」に見えるものを容認することで、意識化できていなかったもっとも大変な無駄を省くことに成功したのだ。この病院は、このシンプルな改良をすることで、こなせる手術数が大幅に増えたという。

■浮かび上がるために
バブル以降しか知らない世代は、「余裕を失うギリギリまで働く」という働き方しか知らない。しかし、そんなやり方を続けていたらイノベーションなどできるはずがない。2000年代初めまでは液晶、デジカメ、フラッシュメモリーなど、世界に誇る技術が立て続けに登場していたのに、その後停滞が続いたのは、余裕を失っているうちに「貯金」を使い果たしてしまったからではないか、と思える。

今の日本に必要なのは、これまでの「もっと頑張れ、そうでなければ世界から取り残される」と脅し、尻を叩き、余裕ひとつ残さず無休憩で頑張らせようとすることではなく、「もう十分頑張っている。むしろ“少し頑張らない”余白を意識的に作り、力こぶの入れ所を考え直そう」と訴えることではないか。

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」という言葉がある。溺れて慌てて暴れると、余計に溺れる。溺れた時はあえてジタバタせず、覚悟を決めて力を抜くと体が自然と浮かび、そのうち浅瀬に打ち上げられる、という、なかなか味わい深い言葉だ。

「失われた20年」では、皆が溺れて慌ててジタバタしていた。しかし、もはや少子高齢化で大変になることは請け合いなのだ。ならばいっそ脱力してみよう。脱力して生じた余力、余白が、私たちに思考する余裕を与え、力こぶの入れ所を教えてくれるように思う。

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